ウィーン、天才の歩み、モーツァルトのピアノ協奏曲...
9月、新シーズンの開幕!ということで、クラシック、な気分を盛り上げたく、普段、あまり聴かない?クラシックど真ん中な音楽を聴いてみようかなと... ベートーヴェンを準備体操に、ブラームスの交響曲、第1番、シューベルトの歌曲に続いての、モーツァルト!いや、散々マニアックなあたりを彷徨っている当blogにとって、モーツァルトは、ある意味、還って来る場所なのです。そこは、無心になれる場所(モーツァルトの無邪気な音楽は、いろいろ聴き過ぎて溜まった耳垢を取り去ってくれる... )であり、また、勇気付けられる場所(あの無邪気さの背景を丁寧に見つめれば、天才、モーツァルトが、如何に努力家であったかを思い知らされ、自分もがんばらな、となる... )でもあって、特別。特別だけれど、気安さがあって、還って来ると、妙に懐かしい感じがする(のは、普段、あまり聴かないからだけではないと思う... )。こういう感覚、モーツァルトでしか得られないような...
そんな、モーツァルト!ロナルド・ブラウティハムが弾くピリオドのピアノ、マイケル・アレクサンダー・ヴィレンズ率いるケルン・アカデミーの演奏で、モーツァルトのピアノ協奏曲、19番と23番(BIS/BIS-1964)、20番と27番(BIS/BIS-2014)を聴く。
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そんな、モーツァルト!ロナルド・ブラウティハムが弾くピリオドのピアノ、マイケル・アレクサンダー・ヴィレンズ率いるケルン・アカデミーの演奏で、モーツァルトのピアノ協奏曲、19番と23番(BIS/BIS-1964)、20番と27番(BIS/BIS-2014)を聴く。
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の後で取り上げられるのが、23番(track.4-6)。19番の2年後、1786年の作品なのだけれど、それは「ピアノ協奏曲」という風格を見せて、19番からは、ちょっと隔世の観すらある。いや、すでにベートーヴェンを予感させるスケール感を漂わせ、ピアノという楽器の魅力をしっかりと引き出して、流麗。特筆すべきは、やっぱり2楽章、アダージョ(track.5)。27番まであるモーツァルトのピアノ協奏曲の中でも、白眉のパートのひとつ... 短調の物悲しさに包まれ、センチメンタルなメロディーを、ピアノがしっとりと歌う表情は、どこかショパンすら遠くに見えるようで... そして、最後、終楽章(track.6)の華麗にして堂々たる音楽!わずか2年ではあっても、19番から23番への飛躍は、ちょっとただならない。裏を返せば、神童、モーツァルトにも、明確な成長の跡が窺えるということ... このあたり、もっと強調されていいように思うのだけれど、どこか、モーツァルトのピアノ協奏曲はどれも同じ、そんな印象をもたれがちなことがもどかしい。のだけれど、19番と23番で、それぞれの魅力をしっかりと強調しながら、明確に成長を響かせるブラウティハムの雄弁なピアノが見事!1795年頃の製作、アントン・ヴァルターのレプリカの、アンティークながら凛とした音色を活かし、自信を以って繰り出される揺ぎ無いタッチは、モーツァルトの音楽に確かな存在感をもたらし、今一度、音楽としての魅力を再確認させられる。「モーツァルト」というイメージではなく、確かに息衝く音楽を体感させてくれる。
Mozart: Piano Concertos Nos 19 & 23 • Brautigam
■ モーツァルト : ピアノ協奏曲 第19番 ヘ長調 K.459
■ モーツァルト : ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488
ロナルド・ブラウティハム(ピアノ : 1795年頃の製作、アントン・ヴァルターのレプリカ)
マイケル・アレクサンダー・ヴィレンズ/ケルン・アカデミー
BIS/BIS-1964
■ モーツァルト : ピアノ協奏曲 第19番 ヘ長調 K.459
■ モーツァルト : ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488
ロナルド・ブラウティハム(ピアノ : 1795年頃の製作、アントン・ヴァルターのレプリカ)
マイケル・アレクサンダー・ヴィレンズ/ケルン・アカデミー
BIS/BIS-1964
という20番の後で取り上げられるのは、1791年、モーツァルト、最期の年に書かれた最後のピアノ協奏曲、27番(track.4-6)。最後だから、より刺激的?かと言うと、保守的... いや、何だか過去を懐かしく振り返るような感覚があるのか?刺激的ではないけれど、どっしりと構えて、安定的。そこに、ふと寂しげな表情が差して... 作曲家の死を知るからそう感じるのかもしれないけれど、切ない音楽である。2楽章、ラルゲット(track.5)など、まるで回想のよう... 19番の頃へと還るようなシンプルなメロディーをピアノが淡々と弾き、それが、かえって胸を締め付ける。そして、終楽章(track.6)。飄々と無邪気な音楽を紡いでいて、ちょっと浮世離れした観もあるのか?いや、これを、ピアニスト、モーツァルトの、ひとつの遺書として聴くと感慨深い。
そんなモーツァルトを聴かせてくれるブラウティハム、ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンと、それぞれにピアノ作品全集を完成させて来たツワモノだけに、説得力が違う。それも、モーツァルトだけでなく、ウィーン古典派の全体像を捉える仕事をして来たからこそのモーツァルト像がそこにあって... 単に美しい音楽を響かせるのではない、モーツァルトの様々を反映させ、そうした背景があって生み出された響きをサルヴェージし、より瑞々しい音楽として、蘇生させる。すると、聴き知った作品も、より深く共感できる気がして... いや、今、目の前でモーツァルトが弾いているような錯覚を覚えてしまう。
Mozart: Piano Concertos Nos 20 & 27 • Brautigam
■ モーツァルト : ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K. 466
■ モーツァルト : ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K. 595
ロナルド・ブラウティハム(ピアノ : 1802年頃の製作、アントン・ヴァルター&ゾーンのレプリカ)
マイケル・アレクサンダー・ヴィレンズ/ケルン・アカデミー
BIS/BIS-2014
■ モーツァルト : ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K. 466
■ モーツァルト : ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K. 595
ロナルド・ブラウティハム(ピアノ : 1802年頃の製作、アントン・ヴァルター&ゾーンのレプリカ)
マイケル・アレクサンダー・ヴィレンズ/ケルン・アカデミー
BIS/BIS-2014