音のタイル張り舗道。

クラシックという銀河を漂う... 

明けました、2020年。

明けました、おめでとうございます。本年も、どうぞ、よろしくお願いいたします。
さてさて、年を跨いで風邪を引いてしまいました。何と言う年明け!という中での、令和ニ年、最初のupであります。ということで、とうとうオリンピック・イヤーを迎えるわけです。ワクワクします。いや、不協和音に充ち満ちた今の世界を見渡せば、商業主義が跋扈し、見掛け倒しの選手ファーストであったとしても、ひとところに世界中の選手が集うことの意義の大きさは計り知れない気がします。ラグビー・ワールドカップのあのキラキラとした日々を振り返れば、なおのこと... なればこそ、2020年、より大きな視点で、期待せずにはいられません。すばらしい大会となりますように... 一方、クラシックは、何と言ってもベートーヴェン・イヤーでございます。生誕250年のメモリアルを迎えるベートーヴェン(1770-1827)!こちらもワクワクしてしまいます。というのも、ひとり好きな作曲家を挙げなさい、と言われたら、いろいろ思案しながらも、ベートーヴェンと答えてしまうだろうから... そう、ベートーヴェンが好き!やっぱり期待せずにはおられません。どんな一年となるのか、楽しみ!
ではありますが、本日は、ベートーヴェン以外のメモリアルを迎える作曲家たちに注目してみたいと思います。いや、これがまたなかなか興味深い面々が揃っておりまして... 2020年のクラシックをより豊かなものにするために、ちょっとマニアックに攻めます。

ということで、ベートーヴェンは、あえてスルー... しての、2020年、メモリアルを迎える作曲家は?まず、新春に相応しい感じのお2人。没後150年、ヨーゼフ・シュトラウス(1827-70)と、生誕150年、レハール(1870-1948)。"ワルツ王"の弟、ヨーゼフ... ウィンナー・ワルツなんて、どれも同じ?と思いきや、ヨーゼフのワルツは、父や兄と違って、重厚感(元々、エンジニアだった... というあたりを思わせる構築性?)があるのが特徴的。もし、今から150年前、1870年、42歳の若さで世を去らなかったら、さらなる音楽的展開、例えば、交響曲を書くとか、オペラを書くとか、もあったかも?そう思わせるヨーゼフの音楽、シュトラウス・ファミリーという括りではなく、ヨーゼフ・シュトラウスとして、改めて聴いてみたい、2020年。そんなヨーゼフが世を去った年に生まれたレハールは、お馴染み『メリー・ウィドウ』で知られる、スッペ、ヨハン・シュトラウス2世と紡がれて来た、ウィンナー・オペレッタの継承者。が、レハールの悲劇は、甘く切ないウィンナー・オペレッタの終焉の時代を生きたこと... やがてナチス・ドイツオーストリアを占領し、奥さんがユダヤ系だったレハールは、難しい立場に... この人もまた時代に翻弄された作曲家だった。というあたり、注目されるのかな、2020年。甘く切ないばかりではなかったレハールの人生にスポットが当たると、その音楽は、またちょっと違ったものに聴こえるのかも...
さて、ちょっと変化球と言いますか... 密かに注目しているメモリアルが、グローブ音楽辞典の編纂者、イギリスの音楽学者、ジョージ・グローブ(1820-1900)の生誕200年!いやね、ほんと、お世話になっております。本年もどうぞよろしくお願いいたします。と、まずご挨拶しなくてはならないほど... てか、音楽のありとあらゆることを網羅し切っているグローブ音楽辞典をパラパラ捲っていると、興味が尽きない。音楽そのものが好き、という身からしますと、これぞ、宝石箱やぁ~ なのであります。それも、分厚くて大きいのが21巻も!図書館に、ズラーっと並んだ威風堂々たる姿を目にすると、音楽という存在の重みをズシリと感じます。ところで、グローブ音楽辞典の2001年にリリースされたオンラインによる最新版って、日本語版とか、どうなんだろう?このメモリアルを機に、準備、されていたり?しないか... しかし、21世紀のグローブ音楽辞典は、紙ではなくオンライン!1878年の最初の出版から、連綿と改訂が続けられてのその進化には、感慨しかない。
ということで、作曲家に戻りまして、当blog的に、2020年、注目したい作曲家、推したい作曲家を4人ほど挙げてみたいと思います。

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生誕350年、カルダーラ(1670-1736)!ヴィヴァルディより8年先輩にあたる、ヴェネツィア楽派の作曲家... となると、ヴィヴァルディみたいに刺激的な音楽を繰り出す?いやいや、その音楽性は、ヴィヴァルディの対極を行って... というより、カルダーラの端正な音楽に触れると、ヴィヴァルディが、如何にアヴァンギャルドであったかを思い知らされる。そんなカルダーラの音楽は、ルネサンス以来、連綿と紡がれて来たヴェネツィア楽派の正統としての洗練、中世以来の商都ヴェネツィアの都会的な雰囲気が感じられ、とても魅力的。
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没後250年、タルティーニ(1692-1770)!イタリア・バロックを代表するヴァイオリンのヴィルトゥオーゾなのだけれど、改めて、タルティーニが生きた時代をつぶさに見つめれば、その後半生はポスト・バロックの時代であって... そうした事実を意識しながらタルティーニの音楽を聴けば、オールド・ファッション。しかし、より丁寧にその音楽を紐解けば、バロックよりもさらに古い音楽像が浮かび上がり、また一味違う感性を見出せる気がする。そう、時代を超越する孤高の表現者... そうした姿勢には、ロマン主義の臭いさえ嗅ぎ取れる気がする...
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生誕250年、レイハ(1770-1836)!そう、ベートーヴェンと同い年で、その友人でもあったチェコ出身のレイハ(ドイツ風にライヒャと発音するのが一般的?けど、長らくパリで活躍したことを考えれば、フランス風にライシャか?)。ベートーヴェンの音楽の背景を知る上で、同世代の音楽というのが実に興味深い!また、ベートーヴェン亡き後、10年弱を生きたレイハ... もしベートーヴェンが、さらに10年生きていたらをそこから窺い知ることができなくもない?レイハに迫ることは、ある意味、ベートーヴェンを多角的に見つめることかも...
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生誕150年、フロラン・シュミット(1870-1958)!オーストリアのフランツ・シュミットと、ごっちゃになりそう?ですが、こちらはフランスのシュミット。で、ドビュッシーの8つ年下、ラヴェルの5つ年上、印象主義の時代のフランスに在って、また一味違う、ロマン主義をベースにしながら、表現主義へと踏み出すような音楽を繰り出したフロラン。ロレーヌ地方のドイツ系の家に生まれたことで、フランスにしてドイツ的な感性も含むのが、フロランの魅力。いや、この独特な魅力、スポットが当たるといいな...

もちろん、まだまだおります、2020年、メモリアルを迎える作曲家!ルネサンス期のイギリス、リュート歌曲の大家、キャンピオン(1567-1620)が、没後400年。ナポリ楽派がやって来る前のロンドンのヘンデルのライヴァル、ボノンチーニ(1670-1747)が、生誕350年。ポスト・ヘンデルの時代のイギリスで活躍、ドメニコ・スカルラッティのソナタのアレンジで知られるエイヴィソン(1709-70)が、没後250年。バッハの弟子で、フリードリヒ大王の宮廷作曲家となるアグリーコラ(1720-74)が、生誕300年。ウィーンでフックスに学び、やがてマリア・テレジアオルガニストとなる、ゴットリープ・ムッファト(1690-1770)が、没後250年。ベルギーが生んだ19世紀を代表するヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ、ヴュータン(1820-81)が、生誕200年。同じく、ベルギーの出身の夭折の作曲家、ルクー(1870-94)が、生誕150年。チェコ出身のピアノのヴィルトゥオーゾ、モシェレス(1794-1870)が、没後150年。ポーランド出身のピアノのヴィルトゥオーゾゴドフスキー(1870-1938)が、生誕150年。19世紀、イタリア・オペラの隠れた巨匠、メルカダンテ(1795-1870)が、没後150年。ヴァイオリン協奏曲でお馴染み、ブルッフ(1838-1920)が、没後100年。と、例年通り、盛りだくさん。でもって、当blogで取り上げたことのない、つまりあまり聴いたことのない作曲家が多めで、今から楽しみ!

ということで、2020年、始まりです。